経験例31 めまいと吐き気およびパニック症状を訴える方 【 パニック障害の治し方 】

発病の経過と症状

8ヶ月ほど前に胃とお腹が痛くなり吐き気と下痢が起こった。その後、便秘になっている。2ヶ月ほど前からはめまいと吐き気が強くなってきた。めまいはふわふわする感じである。その他、外出しようとすると吐き気が強くなる・電車に乗ったり人に出会うと息苦しくなるなどの症状がある。食事は規則正しく摂っているつもりである。生理前になると頭痛がする。食事のあとはお腹がはる。

弁証

・八綱弁証:体がだるい・疲れやすいことから虚証であるが、水分をたくさん飲めていることおよび下痢と便秘を繰り返す・緊張で状態が悪化するという症状があることから実の症候も持っておられた。虚実挟雑証であると言ってよい。喉や口の渇きがあることから熱証と判断された。全体として陽証である。

・気血弁証:気の病証では気虚証である。下痢と便秘を繰り返す・緊張で吐き気が強くなることから気滞証が見受けられた。血の病証では血虚証も、陰虚証も、血滞証も見当たらない。

・五臓弁証:気滞証からこの方の病位は肝に存在する。肝の実が胃に及んだものと思われる。

・病理的産物弁証:口や喉の乾き・顔や手足がむくむと言う症状があることから、水滞証があることがわかった。気滞証も存在する。

・病邪弁証:口が乾くことで水分を良く飲んでおられる。このことから胃の痰飲証が引き起こされていると判断される。水分の摂取過剰による飲食不節と内傷七情が病邪だと判断した。

病名

「痰飲証を併発した肝欝火化証」であると判断した。選薬は肝欝火化証の処方に、痰飲証を改善する薬方を配合した。

経過

1ヶ月の服用でめまいのほうは解消されたために、病院に相談したところ、今のメニエール症の薬がなくなったらもう飲まなくて良いといわれた。体調のほうは以前と比べると良くなっているがこの2週間で腹痛と気持ち悪さを2回ほど感じた。パニック症状のほうは外出していないのでよくわからない。この連絡の数日後、メニエールの薬をやめて2日後にめまいと気持ち悪さがぶり返してきたとご連絡をいただいた。3ヵ月後には「めまい自体が毎日起こっているが起こるときはわかるようになってきたので少し休むなり、寝るなりの対処で凌いでいる。疲れさえ気をつければ通常の生活に戻っている。あと、一息だと思う」とのことであった。半年後の現在は「たまにめまいはあるがよい状態が続いている。」とのことである。

考察

この方は精神的緊張を強めて生活をされておられるようである。精神的緊張によって消化機能の興奮を起こしたことから飲食の不節(特に水分の過剰な摂取)を起こし、そのことで痰飲証を引き出したようである。この方は一度も回転性のめまいを起こしていないことから内耳のリンパ水腫(むくみ)からくるものではなかった。どちらかと言うと車酔いもしくは船酔い様のめまいと言ってよいと思う。このタイプのめまいは痰飲証が多い。