経験例30 拒食と過食を繰り返す若い女性 【 自律神経失調症の治し方 】

発病の経過と症状

数年前から、時々食事が取れなくなかったが、だんだん悪化して最近ではほとんど食事が取れなくなってしまった。そのほかの症状としては、ちょっとしたことで微熱が出てしまうということがある。ご本人に尋ねても、特に原因となるものに思い当たることはないとのこと。この方の食事が取れないのは「食事を取ろうとするのだが、胃が一杯になって、食事が入らない」タイプであった。

弁証

・八綱弁証:裏証で、虚証で、熱証であった。総合的には陽証である。

・気血弁証:気虚証

・五臓弁証:「イライラが強い・怒りっぽくなっている・抑うつ状態である」ことから、「肝」に病位があることがわかった。ただ、「食べられない」ことから、胃にも病位があることがわかる。

・病理的産物弁証:胃の筋肉に収縮が起こっていることから気滞証があると判断した。

・病邪弁証:「肝」に病位があることから、この方の病邪は内傷七情であることがわかる。

病名

「肝」に病位があり、「胃」に気滞があることから、病名は肝気欝結証(かんきうっけつしょう)を基盤とした肝胃不和証(かんいふわしょう)と判断した。肝胃不和証は精神的ストレスが原因で発生するので、精神的ストレスが強くかかったのだと判断されます。発症の原因に思い当たらなかったのは小さいときからこのような症状がたびたび出ていたためであろうと感じました。

経過

1ヶ月の服用で少し改善が起こり、食べられる日が出てきたがすぐに元に戻った。その繰り返しである。詳しく聞くと、良い日にはお腹一杯食べてしまう傾向があるとのことだった。食事を良く食べた翌日は必ずと言ってよいほど食べられなくなる。2ヶ月を過ぎる頃も同じような状態だった。食事の節制をお願いしてもどうしても抑制できない。3ヶ月経ってもほとんど同じ状態が続いた。4ヶ月ほど経ってもほヾ同じような状態が続いたが、以前よりも食べられる量が増えてきているし、悪くなる日が減ってきている。良かったり、悪かったりを繰り返したが、ほヾ1年ほどで、過食が減ってくるとともに、拒食状態が極端に減ってきた。その後、半年ほどで、正常となり廃薬した。

考察

この方は典型的な肝胃不和証であった。肝の病変が胃に及んだ病態である。つまり、精神的ストレスによって、大脳辺縁系 (間脳および視床下部を含む)が興奮を起こしたために、自律神経が亢奮して、平滑筋である胃の筋肉を強く収縮させたことが原因で起こったものであった。このような方は一般に女性ホルモンにも乱れが出てくる。大脳辺縁系には性ホルモンを調整する中枢もあるために、性ホルモンも乱れやすいのである。