こんにちは。
自律神経失調症/パニック障害専門の漢方薬局、せいゆう薬局です。
今回のひとりごとは
強迫性障害の治療に用いる処方
です。
自律神経失調症専門じゃないのかと言われそうな内容ですが、当店では強迫性障害の治療を行うことは意外と多いです。
強迫性障害は自律神経失調症と併発することは多いのではないかと感じています。
自律神経失調症について相談があり、実は強迫性障害もあると後から知らされることが多いです。
(自律神経失調症の専門店で強迫性障害も治療出来るとは思わないのは当然ですね。)
初めに断っておきますが、具体的な処方名をお伝えするための記事ではありません。
何卒ご了承ください。
それではよろしくお願いします。
強迫性障害とは
強迫性障害という病名をご存知の方は多いかと思います。
詳しい内容をご存じない方もいらっしゃると思いますので、簡単に説明しておきます。
強迫性障害とは、強迫観念と強迫行為から構成される病気です。
強迫観念
「強迫観念」とは、不安や恐怖を感じる(思い立つ)とそれが頭から離れなくなる状態です。
人間は生きていれば、何かに不安になったり、恐怖を感じることは必ずありますが、ほとんどの人は「そんなはずはないか」とか「自分には関係ないか」とスッと割り切れる状態になります。
しかし、強迫性障害で強迫観念が強い状態にあると不安や恐怖を感じた場合、それをさらに増幅して考えていくため、より強い不安や恐怖を感じるようになります。
脳がとても敏感な状態にあり、不安や恐怖も含めた「嫌な情報・感覚」を増幅してしまう状態にあります。
強迫行為
「強迫行為」とは、強迫観念で出てきた不安や恐怖を払拭するために起こす行動のことです。
分かりやすい例としては、潔癖症がよく挙げられます。
「手が汚れているのではないか、菌が付いているのではないか」という強迫観念(不安や恐怖)が出てきた際に
「手を何度も何度も何度も何度も繰り返し洗い続けること」が強迫行為になります。
強迫行為は自分が納得出来るまでずっと続きます。
実際に手が汚れているかどうか、菌がいるかどうかは特に関係がなく、心(脳)が納得出来るかどうかです。
症状が強いほどに、この納得出来るまでの時間は長くなっていきます。
反対に症状が軽いと1~2度手洗いをすれば納得して手洗いを止められます。
ちなみに鍵をかけたかどうかが不安で何度もチェックするというのも強迫性障害の一種と言われています。
強迫性障害は生きている間に100人に1人くらいは発症すると言われています。(生涯有病率1%ほど)
こう聞くと意外と多い疾患と言えます。
強迫性障害の治療
当店では強迫性障害の治療に取り組むことも多いので漢方医学的な治療方針も簡単にお話しておきます。
不安や恐怖が増幅され振り払えなくなるという点もあることから、脳が過敏な状態にあると考えています。
ベースとしては脳が過敏な状態にあり不安や恐怖が増幅される点は同じですから、パニック障害と同系統の病気と考えています。
したがって、脳の過敏な状態を改善していくことで強迫観念をそもそも出さないようにしていくという治療方針になります。
強迫観念が出なければ、強迫行為に発展することはありません。
強迫行為はわざわざ治療してあげる必要はない部分ということになります。
(ただし、実際の改善過程では強迫行為の軽減から改善が進んでいきます。)
脳の過敏な状態は、脳での血流が低下した状態から引き出されるものと考えています。脳の過敏な状態を改善していくには、脳での血流を良くしていくことが治療法となります。
不安神経症やパニック障害とも治療の方向性は同じです。
ただし、脳血流が低下している原因は人それぞれであるため、治療に用いていく漢方薬もそれぞれ違っています。
強迫性障害治療の答えとは
上述したように、強迫性障害の治療は脳血流を良くしていくことになるのですが
治療経験を重ねていくと不思議なことに気付きました。
脳血流を良くしていこうという治療を続けていく時、脳の過敏な状態の改善を確認しつつ、少しずつ処方を調節していきます。
すると調節を重ねていった漢方薬の最終形態がほとんどのみなさんで同じ処方になるのです。
「強迫性障害の治療にはこの漢方薬を使います。」という処方が判明しているのです。
この漢方薬を分かりやすく「強迫性障害治療薬A」と名づけます。
何故か、治療を進めていくとほとんどの皆さんがこの「強迫性障害治療薬A」に行き着きます。
(多少の例外はありますが稀なケースです。)
この治療薬Aで強迫性障害は治っていくんだなと感じているのですが、そのもう一方でさらに不思議な点にも遭遇しています。
強迫性障害の治療に取り組んでいく場合、初回からこの「強迫性障害治療薬A」を用いていけばどんどん改善が進んでいくのかと言われれば、そうではないのです。
というよりも、ほとんど効果が得られないのが実際の治療結果です。
文中にも記載しているように「漢方薬の最終形態」がこの強迫性障害治療薬Aであるというのがポイントです。
色々と治療していった結果、最後に用いるのが強迫性障害治療薬Aになるということです。
自律神経失調症やパニック障害の治療では、このような経過になることはありません。
処方の最終形態が同じになるのは「強迫性障害治療」の特徴と言えます。
ただし、これが何故なのかは全く分かっていません。
漢方治療は、使い方(治療方法)は分かるのですが何故そうなるのか分からないことがほとんどです。
強迫性障害の治療経過
「最終形態が同じになる」ということは、「最後以外は違う」ということでもあります。
漢方治療では、たくさんの不調が出ている場合、治療をしていく順番はとても重要になります。
(この順番については、またいずれ別のひとりごととして呟いていきたいとは考えています。)
不思議に思われるかと思いますが、強迫性障害で相談があったとしても、まずはそれ以外の体調不良を改善させていかないと強迫性障害治療薬Aが効かないのです。
ちなみに強迫性障害の方で、体調不良や精神症状を他に呈していないという方には今のところお会いしたことはありません。必ずその他の不調をかかえている状態にあるはずです。
この強迫性障害治療薬Aは、もちろん当店が長年にわたる治療経験から導き出したものですので公表する予定はいまのところありません。(ちなみに1つの処方ではなく、処方の組み合わせになります。)
もし処方を公表したとしても、まずは体調を整えていく治療が必要なため、全体としての治療は難航すると考えています。体調(自律神経)を整えていく方が余程大変です。
もちろん、不安感や恐怖感の軽減と共に強迫性障害の症状も緩和していくことが多いです。
ただその他の体調不良はほぼ改善したとしても、強迫性障害の症状だけが残っていくことがほとんどでもあります。これも何故かは不明です。
自律神経系の不調とはまた一段違った階層に強迫性障害があるのだと理解しています。
PTSD(トラウマ)のような脳への不安や恐怖の刷り込み要素があるのかもしれません。
強迫性障害治療薬Aは、強迫性障害治療の最終段階で「最後の一押しをする処方」という位置付けにしています。
ある程度のところまで治療が進んでくると強迫性障害治療Aがあるからあとは大丈夫という安心感もあります。
長い年月をかけて見つけ出したこの「強迫性障害治療薬A」を大事にしていきたいとも考えています。
もしかするとまだ改良の余地も残されているのではないかとも考えているところです。
最後に
強迫性障害の治療は、自律神経失調症やパニック障害の治療よりも少しだけ手間がかかりますが、治療自体は問題なく可能なものと考えています。
強迫性障害は漢方治療が可能です。
おまけ:強迫性障害の治療過程
おまけとして、強迫性障害がどのように改善していくのかオーソドックスな例として紹介しておきます。
強迫性障害の治療経過として、ある日を境に強迫性症状がピタッと出てこなくなるというような改善は起こりません。
まず先に強迫行為に改善傾向が見えてくるというところからスタートしていきます。
「手洗い」という強迫行為を例に出せば、
漢方治療開始前は
「手が汚れているのではないか」という強迫観念が出てきた時
「何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も手を洗う」
という状態から改善が進んでいくと
「何度も何度も何度も何度も何度も手を洗う」
そこからさらに
「何度も何度も手を洗う」
「1度手を洗えば満足出来る」
と強迫行為の改善が見られてきます。
手洗いで納得出来るまでの回数が減っていくのです。
そこから、強迫観念に改善が徐々に現れ
「手が汚れているのではないかと思い立つが、そんなはずはないとやり過ごせるようになる」という経過が出てきます。
強迫観念をスルー出来ることが少しずつ増えていくのです。
ほとんどの強迫観念をやり過ごせるようになると、最終的には強迫観念自体が出てこなくなる
という改善過程を経て、治療が終了となります。
強迫観念をスルー出来ることが何度か出来た
強迫観念をだいたいスルー出来るように
強迫観念が出てこないようになる
といった改善経過になることが多いです。
①強迫行為の軽減 → ②強迫観念の軽減という順番です。
強迫性障害でお悩み・お困りの方、ご相談下さい。
何に対して強迫観念が出てきているのか、どういった強迫行為が出ているというのは特に関係ありません。
強迫性障害という一括りで治療をしていけると考えています。
今回のひとりごとは以上です。
最後までお読みいただきありがとうございました。