こんにちは。
自律神経失調症/パニック障害専門のせいゆう薬局です。
今回のひとりごとは
向精神薬のススメ
です。
漢方薬専門店が何を言っているのかというような内容ですが、これまでの治療経験(35年を超えました)を基に判断していくとこのような結論に達しています。
なお、向精神薬とは精神安定剤(抗不安薬)や抗うつ剤、抗精神病薬のことを示します。場合によっては、睡眠薬も含めます。ざっくりと脳に作用する薬とまとめて考えても良いかと思います。
※「皆さん向精神薬を服用してください」という内容ではないのでご安心下さい。
また後述していきます。
漢方薬局によっては「向精神薬」などの脳に作用する薬は怖いものと吹聴するところは多いのではないかと思います。(その方が漢方薬を買ってもらえるから、というのひとりごとです。)
一部の医師にもこうした向精神薬が怖いものと考えている方もいらっしゃいます。(このあたりは何科の医師なのかによっても大きく違ってくるのかもしれません。)
ただ、この怖さについては向精神薬についての考え方の相違によるものであり、使い方を間違わなければとても良い薬であると当店としては考えています。
◎向精神薬とは
まず、とてもとても大事な前提条件です。
「向精神薬は治療薬ではない」
という点がとても重要になります。
治療薬ではないというのは、原因を治療し症状が出ない状態にしていくための薬ではないという意味です。向精神薬は症状を治してはくれません。
こうした向精神薬は、症状を抑えるためだけの薬と当店では考えています。
症状を抑えてくれる効果は強いものを持っていますので、症状がある時に服用すれば症状を緩和するか、症状を無くしてくれます。(もちろん合う・合わない、効く・効かないの個人差はあります。)
ただし、原因を治療している訳ではないので、薬の効果が切れると症状は出てきます。
したがって、症状が出ている限りは服用を続けていかなければなりません。
では、どういった意味合いでこの向精神薬が存在しているのかと言えば、
「この薬で症状を抑えておいてあげるから、自分の回復力で良くなってね」
ということになります。
ヒトには恒常性維持機能と呼ばれる回復力がありますので、不快な症状を抑えている間に体調、症状が回復していくことは当然期待出来ます。
こうした向精神薬が処方される方の大半は、自力で良くなっていると考えています。
向精神薬はその手助けをしているだけです。とても優秀ですし、とても役に立つ良い薬であると考えています。
もちろん服用したことで治っていく方はたくさんいらっしゃいます。
(ただし、向精神薬の服用で治った訳ではなく、自身の回復力で治っている点には注意しておきましょう。)
もう一方で、長年不調が続いていたり、加齢によってであったり、不調の原因に晒され続けている状況にいるなどの影響で、回復力が著しく低下してしまっている状態の方ももちろんいらっしゃいます。
こうした方達では、いくら向精神薬で症状を抑えておいてあげても、回復力が減っているためいつまで経っても治らず、症状は出続けることになります。
症状が出続ける限り向精神薬を服用し続けることになります。向精神薬を20~30年と服用し続けている方も普通にいらっしゃいます。(症状を適切にコントロール出来ているのであれば、20~30年服用を続けても問題ないと考えています。)
◎ポイント
回復力が小さくなっている方では、向精神薬を服用しても改善は期待できない。
◎耐性が付く?
問題となってくるのが、向精神薬は治療薬ではないため、病気の進行と回復力が勝負して、病気の進行が勝ってしまうことがあるということです。
つまり向精神薬を服用し、症状が抑えられているように見えても病気は進行しているということがあるのです。症状が抑えられてしまっているために、進行が見えづらいのです。
同じ薬を続けていたのに、何故か途中で効かなくなるのは、耐性が付いたということではなく、病気が進行し服用している薬では抑えきれないほど強い症状になってしまったと考えていきます。
向精神薬は治療薬ではなく、あくまでも症状を抑えてくれるためのものであり、治療薬ではないので服用中にも病気が進行してしまうこともあるのです。
薬を服用していたのに、期間が経過すると効かなくなる(耐性が付く)というのは、こうした病気の進行を知らないために誤解されているのかと考えています。
向精神薬が治すための薬であるということ自体がそもそもの誤解ですし、症状が軽い(症状を抑えてくれている)=「治っている」と考えてしまうこと自体も誤解なのです。
薬が効かなくなったという経過が見られる場合、耐性が付いたのではなく、悪化したと考えた方が自然です。
◎離脱症状がある?
また、良く言われるのが向精神薬には離脱症状があるという説です。
これも向精神薬が治療薬ではないことを理解出来ていないことからくる誤解と考えています。
これまで書いてきたように、向精神薬は症状を緩和するためのものです。
症状がある限りは服用を続けて、症状を抑えていく必要があります。
症状が残っている状態で向精神薬を減らす、止めようとすると、薬で抑えていた症状が一気に出てきます。
症状を抑えるための薬を飲まなくなるのですから、薬の効果が消えて症状が出ることは当然のことと考えます。
症状が無くなっている状態であったとしても、向精神薬で完全に症状を抑えられている状態である可能性があります。症状を抑えていた薬を減らす、中止すると症状はまた当然出てきます。
向精神薬を減らす、止めると不調が出てくることを「離脱症状がある」とおっしゃっている方が本当に多いように感じています。
効いていた薬を止めてしまえば、効果がなくなり症状が出てくることは当たり前のことです。
また、「耐性が付く?」でお話したように服用中にも病気が進行することがあります。
服用中にも病気が進行して新たな症状が出てきているということも珍しくありません。(ただし、この新たに出てきた症状も向精神薬が抑えてくれています。もちろん抑えられないこともありますが。)
「向精神薬を減らすとこれまでになかった症状が出てきた。これが離脱症状だ」とおっしゃる方もいらっしゃいます。
向精神薬が治療薬ではないことへの誤解と
治療薬ではないので服用中にも病気が進行することがあるということをご存知ないことからの誤解と言えるのかと思います。
◎ポイント
離脱症状とは、治っていないのに薬を止めようとしているだけ。
◎向精神薬のススメ
やっとここから本題です。(これはひとりごとの範疇なのか?と長文を反省しています。)
では、当店はどのような形で向精神薬の服用をお勧めしているのでしょうか。
「服用して不快な症状が少しでも軽減出来るのであれば、迷わず服用して欲しい」
と考えています。
不快な症状を感じていること自体、強いストレスとなっています。
強いストレスがかかっていると、回復力は押さえつけられてしまいます。
このストレスを減らす(無くす)ことで、回復力を発揮させてあげられるようになります。
ただし、長年不調に苦しんでいたり、大きな精神的ストレス環境下で生活している方などは、そもそも回復力が低下した状態にあります。
この時は漢方薬で病気の原因部分を治療しながら、回復力をサポートしていくような治療を行っていきます。
特に当店が専門とする自律神経失調症やパニック障害の方は回復力が低下し、自力での回復が難しくなっている方がほとんどです。
向精神薬で症状というストレスを減らしている間に、漢方治療で原因そのものを治療していき、症状が出てこない状態にしてあげます。
原因が無くなり症状が出なくなっている状態になると、向精神薬を減薬・断薬しても症状が出てくることはありません。
実際、当店での漢方治療を進めていく上では、向精神薬の服用によって症状を抑えられている方と、服用せずに症状を受け止めながら治療を進めていく方とを比べた場合、前者の方が改善がスムーズに進んでいきます。これはこれまでの治療経験上から言えることです。
◎ポイント
向精神薬で症状を抑えてあげた方が漢方治療での改善が早くなる。
症状というストレスを緩和していくことは、改善を早く進めていくために有効ですし、何よりも症状が軽くなることでその方の生活がとても楽になるということが大きなメリットになります。
上方で述べたように、向精神薬自体には耐性が付いたり、離脱症状が出たりというデメリットはないと考えています。
服用することによるデメリットはほとんどなく、比較的副作用が出やすいくらいです。
そして、もし副作用が出てしまった場合には速やかに服用を中止してしまえば問題ありません。
向精神薬に脳を破壊してしまうような副作用はありません。服用を中止し、体内から薬が代謝されて消えていけば、副作用は必ず消えていきます。(薬は体内から消えてしまったのに、副作用は残り続けるというような経過にはなりません。)
当店の勧める向精神薬は、あくまでも「服用すれば症状が軽減できる薬」であることが前提です。
服用して副作用が出てしまうような薬は、そもそも症状の軽減が出来ていません。
ともすれば、服用によってさらに不快な症状というストレスが増してしまっています。そのような薬を服用するメリットはどこにも無く、デメリットしかありません。
症状が軽減出来ない向精神薬は服用しないで下さい。
一方でただ向精神薬の服用をすれば良いという訳ではありません。
不調の原因が治らない限りは、症状が出てくる状態が続いています。これではいつまで経っても向精神薬の服用が止められません。
漫然と服用を続けていくことで、病気が進行し症状が抑えられなくなる可能性も十分に考えられます。(耐性が付いたと間違えることになる。)
漫然と服用を続ける中、ネットや雑誌・本などの情報で「向精神薬は怖い」と見聞きすると、すぐにでも薬の服用を止めたくなります。ここで無理に服用を減らしたり、止めたりすると抑えていた症状が吹き出したり、新たな症状が出てくるなどして「離脱症状が出た」となってしまいます。
当店では、向精神薬を服用し不快な症状というストレスを抑えている間に、漢方薬で原因部分を治療してあげることをお勧めしています。何度もお話している「向精神薬は治療薬ではない」ということです。
あくまでも症状を抑えてくれるものであり、原因の治療は漢方薬に任せていくという流れになります。
向精神薬が効いてくれて、患者さんは快適に生活出来、治療もスムーズに進んでいくとすると、メリットの大きさが分かります。もちろん、漢方治療で体調が良くなってしまえば、向精神薬を減薬・断薬していく流れになります。
状態が良く、そもそも不調・症状が出ない状態にあれば、向精神薬を中止しても不調が出てくることはありません。
◎向精神薬は服用しないといけないものではない。
ここまで熱弁をしてきていますが、向精神薬を服用しないと自律神経失調症やパニック障害が改善しないという訳ではありません。
脳に作用する薬に抵抗のあることはとても良く理解できますし、怖い情報を聞いた(ネット・雑誌・本・友人などから)ことで服用出来そうにないなど、それぞれ事情があることも分かります。
特に過去に服用して副作用が出たことがある方は、再服用を試みることが難しいかもしれません。
「絶対に向精神薬は服用したくない、だからこそ漢方治療を選んだんだ」と言われることも少なくありません。
当店では、こうした方に無理に向精神薬を服用して欲しいとは思っていません。
向精神薬を怖い薬とは考えていませんが、抵抗のある薬を服用すること自体も実は強いストレスになります。抵抗感を強く持っている方ほど副作用が出やすいのではないかとも思っています。
向精神薬は漢方治療の補助としてはとても有益なものと考えていますが、治療に必須なものではないとも考えています。基本としてお勧めはしますが、無理な服用はお勧めしません。
漢方薬だけでも自律神経失調症やパニック障害はしっかりと治療していけると考えています。
◎ポイント
向精神薬を服用しなくても自律神経失調症/パニック障害は治療可能です。
◎終わりに
「ひとりごと」というには長文となってしまいました。反省しています。
簡潔に書きたいと思っている半面、分かりやすく、でも詳細に伝えたいという気持ちも強いのです。
次のひとりごとは出来るだけ簡潔にを目指していきたいと思います。
本日のまとめ
- ・「向精神薬は治療薬ではなく、症状を抑えるためだけの薬」
- ・「向精神薬は怖い薬ではない」
- ・「向精神薬で症状を抑えてあげると漢方治療はスムーズに進む」
- ・「ただし、抵抗がある方は無理に服用しなくても良い」
以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。