発病の経過と症状
パソコンをみていたら突然息苦しくなりどうしょうもなく不安になった。その後、身体がだるくなり疲れや肩こりなどが続いた。出かける前、帰宅後にドキドキしたり、居ても立ってもいられなくなる。主人に辛い症状をわかってもらえないとき頭がズーンと重くなる。
弁証
・八綱弁証:
表裏弁証:病気の位置は体の内部であることから裏証である。
虚実弁証:「疲れやすい・動きたくない・すぐに横になる」ことから虚証である。
寒熱弁証:「冷水を好む・のぼせる・口が乾いて水分を過剰に摂る・怒りが強い」などからこの方は熱証である。なお、「冷水を好む・水分を過剰に摂る」ことから炎症(実熱)であることがわかる。この方の「手足が冷たい」と言う寒証の症状は体表の血流低下からくる「偽の寒証」だと判断した。
陰陽弁証:熱証であることからこの方は陽証である。
・気血弁証:気虚証である。血虚証の症状はない。
・五臓弁証:「怒りが強い、抑うつ感および憂うつ感が強い・腹痛が出る・排便してもスッキリとしない」などから肝に病変があることがわかる。また、「不安感が強い・不眠・動悸がする」などから心に病変があることもわかる。さらに、「歯茎が腫れて痛む・胃の痛みは食後に軽減する」と言った胃熱の症状がある。以上から、この方は「肝、心、胃」の三つに病変があることがわかる。
・病理的産物弁証:「両手や両足に浮腫がある」ことから水滞証が存在していることがわかる。
・病邪弁証:「精神的緊張を基盤とした飲食の不節(水分の摂り過ぎ)」
病名と選薬
肝鬱化火証を基盤とした水滞証:肝欝化火証には疎肝解鬱剤が主体となり、水滞証には化痰利水剤を使用した。
経過
波がありながらも順調に経過して、1年経った現在では不快な症状は完全に消えた。もう間もなく廃薬である。
考察
この方は生来緊張を強めて生活をされて来られた方である。その緊張感が肝の興奮を引き起こし肝鬱化火証を引き出したために胃熱を発生させて冷たい飲み物を好むようになったようだ。その冷たい飲み物を処理できなくなって二次的に水滞証を引き起こしてしまったと思われる。水滞証では「心の病変」を引き起こしてしまうことが多い。