経験例27 めまい、吐き気と不安感を訴える40代 女性 【 自律神経失調症の治し方 】

発病の経過と症状

約8ヶ月前から胃と腸が痛むようになり、その後、吐き気を感じると共に、下痢~便秘を繰り返すようになった。同時に、腰の痛みも頻発するようになった。3ヶ月ほどすると、めまいと吐き気が主症状となり、今日まで続いている。めまいと吐き気は車酔いのような症状である。頭がふわふわする。外出しようとすると不安から吐き気がひどくなる。その他、電車に乗ったり、人に会うと息苦しくなる。パニック障害もあると思う。この数ヶ月は胃腸の調子が悪く、下痢と便秘を繰り返している。食事の不摂生はない。病院ではメニエール病と診断されて、治療をしているがはかばかしくない。

弁証

・八綱弁証:病位は体の内部にあることから裏証であり、「水分を好む」ことから熱証であることがわかった。また、虚実の判定では虚証。全体的には陽証であった。

・気血弁証:「疲れやすい・体がだるい」などの症状からこの方は気虚証であった。

・五臓弁証:「吐き気」があることから病位は胃にあることがわかるが、緊張状態で症状が憎悪することおよび下痢と便秘を繰り返す(気滞の症候)ことから肝にも存在することがわかった。

・病理的産物弁証:緊張状態で吐き気が強まることから気滞証の存在がわかる。また、この方には「胃の膨満感・吐き気・乗り物酔い・めまい・立ちくらみ・動悸」と言った痰飲の証が認められ、かつ、「両手や両足にむくみが出る」ことから、痰湿証であると判断した。痰湿証は痰飲証よりも水分代謝障害が強いものであると私は認識している。痰飲証も、痰湿証も水滞証と言う病態の一つである。

・病邪弁証:痰湿証が存在することから飲食不節が原因であると判断される。口の渇きがあり、水分の摂取量はかなり多いほうである。これまで無意識に水分を多めに摂り続けてきた結果であろうと思う。

病名

主症状が「めまいおよび吐き気」であることからこの方の基本的な病態は痰湿証であると判断した。ただ、緊張を強めると症状が悪化したり、気滞の症状である下痢と便秘の繰り返しから肝の影響を強く受けていると判断した。以上から、この方の病名は「痰湿証を伴った肝気欝結証」と判断した。処方は肝気欝結証と痰湿証の薬方を配合した。

経過

服用1ヶ月後、「めまいは完全になくなった。ただ、まだ電車に乗るのは不安である。美容院に行くことはできたが、パニックへの不安が残っている。腹痛や気持ちの悪さをたまに感じる。」とご連絡を戴いた。めまいが解消されたために、病院の先生に相談したところ、メニエール氏病の薬は中止して良いとのことだったために、メニエール氏病の薬は止めたがその2日後の夜あたりから気持ち悪くなり、元に戻ったようになった。3ヵ月後の連絡では「めまい自体は毎日起こっているが起こりそうなときがわかるようになったのでそのときは寝る。そうすれば不快な症状はほとんど出てこない。現在は疲れないようにしていれば通常の生活を送ることが出来ている。あと一息というところまできていると思う。」とのことであった。4ヵ月後には「ほぼ、大丈夫である」と、言うご連絡を戴いた。

考察

この方の基本的な症候は前述のとおり痰湿証であった。胃腸での水分の吸収・排泄が障害されることによって起こる病態である。胃腸の機能に負荷(ストレス)がかかると胃腸機能が正常に働かなくなりこのような水分の吸収・排泄障害が起こるのである。水分の排泄障害が起こると、全身、特に水に浮かんだ臓器である脳には大きな影響が出てくる。脳にむくみが起こることでめまいやふらつき感が起こると共に、神経過敏となって不安感あるいはパニック的な症状が出てくるものと思われる。