経験例21 たくさんの症状を訴える20代 女性 【 自律神経失調症の治し方 】

発病の経過と症状

小さい時から過敏性腸症候群を発症していた。現在、食事をすると体調が悪くなる。ひどいときは場所を選ばずにでてくる。訴える症状は多岐にわたる。
「動悸・手足が冷たくなる・震える・胸が痛くなる・胃が気持ち悪い・気が遠くなる・不安に襲われる・涙が出る・緊張が強い・睡眠が浅い・日中も眠い・やる気が出ない・人の言葉に異常に敏感・下痢を繰り返す・生理前には憂うつになる・下腹部の痛み・感情がコントロールできない・疲労感が強い・目の奥が凝って首が詰まって頭が痛くなりとてもしんどくなる・むくみ・冷え性」を訴えておられた。

弁証

・八綱弁証:裏証で、虚証で、熱証であった。総合的には陽証と判断された。

・気血弁証:気虚証で、血虚証であった。

・五臓弁証:心病の症状である「動悸・強い不安感・不眠・神経過敏」と肝病の症状である「イライラ・多怒・ヒステリック」などが現われている。心と肝に強い亢奮が起こっていることがわかった。また、「水様便・下痢・むくみ・腹なり・乗り物酔い・頭重感」などがみられることにより、脾胃の虚による水湿があると判断した。

・病理的産物弁証:水滞証の症状が多発していることから水滞証があると判断された。

・病邪弁証:飲食不節

病名

この方の病態は脾胃気虚のものが熱邪(精神的緊張)を基盤として飲食不節に陥ったことで、脾胃を湿邪に侵襲された脾胃湿熱証と判断した。選薬は脾胃湿熱証の処方。

経過

服用2ヵ月後には「精神的には落ち着いてきている」とのことであった。4ヵ月後には夕食以降に不安感が出てくるが日中は不安感はほとんど出ない。5ヵ月後には「食べ過ぎたためか3日ほど悪かった。週に一回は泣いている。夕食以降に体調が乱れる」とのことであった。8ヵ月後、「食べ過ぎると1~2日ほどはイライラするがそれ以外は体調は悪くない。」 9ヵ月後には「不快な症状がまだ出てくるが強くはない」とご連絡いただいた。10ヵ月後、「まだ、夕方になると体調が悪くなることがある。不安感と吐き気である。寝つきが今一」 12ヵ月後、「不快な症状はほとんどでなくなった。廃薬までもう一息だと感じる」 13ヵ月後、「辛い症状は完全に消えた。もう1ヶ月服用したい」とのことであった。この1ヵ月後に「辛い症状はまったく出なかった。廃薬しても良いか」と言うお電話を戴き、廃薬をした。

考察

この方は精神的緊張状態で過食になったために、胃腸機能を乱したことが、水分の代謝を悪くして、水滞証を起こしたと判断された。たヾ、食欲不振や吐き気あるいは上腹部膨満感などの胃気虚の症状は仰られなかったので、胃腸機能の乱れが原因であるとは即座に判断できなかったが、不快な症状が最初に出たのが食事中であったこと、食事をすると体調が悪くなる、胃腸の水分の代謝障害からくる水湿証があったことから、この方は胃腸機能への負荷(ストレス)が自律神経に大きく影響したと判断された。