経験例16 不安神経症 60代 女性 【 自律神経失調症の治し方 】

発病の経過と症状

ご主人が退職後、朝からお酒を飲み始めた。そのためにアル中になり入院した。その後、ご主人は入退院を繰り返していたが、1年後に奥様の方が心労のために体調を崩された。58才のときであった。50才のときは叔母がアルツハイマーにかかり、その看病をしていたが、ある日、突然、幻聴が聞こえるようになった。幻聴以外にも、手のしびれ、不眠、食事が取れなくなったなどの症状がでていた。このときにはいつの間にか治った。今の症状は「心細い、不眠、胸が締めつけられる、突然血の気が引く、焦燥感」などである。

弁証

・八綱弁証:裏証・虚証・熱証であった。総合的には陽証と判断された。

・気血弁証:気虚の症状は出ていない。体力のある方である。血虚証がある。

・五臓弁証:情緒の変動が強く現われていることから、肝病と判断した。

・病理的産物弁証:特になし。

・病邪弁証:内傷七情(精神的ストレス)

病名

肝気欝結証で、強い熱証が見られる。よって、肝欝化火証であることがわかる。また、50才の頃には幻聴まで聞こえてきたこと考えると、ご病気がとても強いことがわかる。お話は理路整然としているので、統合失調症(精神分裂症)とも思えない。肝欝化火証では女性ホルモンとの関連が大きいので、女性ホルモンの乱れによるヒステリー症状と考えると納得することができる。50才での体調の乱れの場合は更年期障害を疑わなければならない。

経過

漢方薬の1ヶ月の服用で、ほんのわずかだが良い方向に向かっているとお話いただいた。3ヶ月を過ぎる頃には、胸の締めつけ、血の気が引くと言った症状はほとんどなくなった。向精神薬を減らしているとのことである。5ヶ月経過の状態は軽い抑うつ感が時々出ているとのこと、5月であることから、木の芽時の体調の狂いから来ているのかとおっしゃる。6ヶ月経って、良い状態であるとの連絡を戴いた。7ヶ月の服用で廃薬した。

考察

この方はもともと体力のある方のようである。閉経が49才のときだったということから、50才での体調の狂いは更年期に入られた時期の叔母の看病が引き金になったと思われる。更年期障害として発症されたようだ。その8年後に悪化したが、このときはご主人のアル中で心配されたのが、再発を促してしまったようである。
女性ホルモンの乱れからくる病態を日本では血の道証と言い習わしているが、血の道証では精神病を思わせる症状がでてくることが多い。女性で、精神病を疑わせるほどの激しい症状が出てくる場合、血の道証を疑うべきだと思う。