経験例15 激しいめまいを訴える50代 女性 【 自律神経失調症の治し方 】

発病の経過と症状

先月のはじめ、夜、トイレに行こうと布団から立ち上がったとたん、くらくらとめまいがして、立っておれなくなった。その後も、立ち上がったり、寝たりするとくらくらしためまいが出てくる。めまいが出ると半日ぐらいは立ち上がれない。病院で治療を受けたが、症状はまったく変化ない。来週、東京で知り合いの結婚式があるから、早く治したいということで相談があった。めまいは寝ていると出てこないが、立ち上がったり、寝たりすると出てくる。発作が出るのは主に夜から朝にかけてである。なお、このめまいは回転性のものではない。

弁証

・八綱弁証:熱証・虚実挟雑証

・気血弁証:気虚・血虚

・五臓弁証:肝病

・病理的産物弁証:特になし。

・病邪弁証:内傷七情

病名

気血両虚の肝欝化火証 選薬は気血両虚の肝欝化火証の薬方

経過

服用開始の翌日の朝、布団から起き上がるときに、軽いめまいを感じたが、たいしたことはなかった。その翌日には東京に行って、結婚式に出席した。旅行中も、帰ってきてからも特にめまいは起こっていない。

考察

この方のめまいはじっとしていると発生しないこと、吐き気が現れないことから、メニエール症ではないと考える。めまいの状態からは立ちくらみの強いものと思えた。立ちくらみは自律神経の乱れで起こるものであるので、体調の乱れが強い立ちくらみを引き起こしたと考えるべきだろう。
発症の時期に、緊張が高まっていた状況を考えると、原因は精神的なものだと判断できる。このとき、更年期症状と思われるフラッシュバックが頻発しているから、ちょうど、この時期、女性ホルモンのバランスの崩れが影響していたと思われる。
なお、立ちくらみは、古典的な方法では苓桂朮甘湯や補中益気湯を優先しがちであるが、苓桂朮甘湯は寒証の脾虚生痰の処方であり、補中益気湯は熱証の中気下陥証の薬方であるが、この方には脾胃虚の症候はまったく認められなかった。