発病の経過と症状
奥様からのご相談です。ご主人の体調が悪くなったのは3年前の夏ごろからとのことです。夏ばてを起したのが原因だと思うとお話されました。不快な症状は「充分な睡眠がとれない、寝入りが悪く少しのことでも起きてしまう。異常に汗をかく。からだは冷たいのに頭からものすごい量の汗が出る」でした。
弁証
・八綱弁証:虚実狭雑証(虚と実が入り混じった証)、裏証、熱証(極めてつよい)、陽証
・気血弁証:気虚証
・五臓弁証:食欲がない・脂ものが鼻につくなどの胃腸症状がみられることから脾胃に病位があると判断。
・病理的産物弁証:多汗・水分の過剰摂取・軟便~水様便がある・むくみがある・尿の出が悪いことから水滞証ありと判断。
・病邪弁証:飲食不節であると判断(冷たい飲み物の摂り過ぎがある)
病名
この方は冷たい飲みものを異常に摂っておられました。この冷たい飲みものが消化機能を乱し、水分の代謝を悪くしたと思われます。冷たい飲みものを体が要求するのはこの方がもともと偏熱(機能亢進)体質であって、精神的緊張を強めて生活をされたことが基盤となったものと思われます。機能の亢進から体のなかに異常な熱が発生したために、この熱を冷ますためのひとつの生理的欲求として起こったものと考えられます。以上から、機能の亢進を清熱剤で鎮め、水分の代謝を改善する処方を選薬しました。
経過
1ヵ月後にはだいぶ良いとご返事を戴きました。その後、同じもので良いとのことでしたので、半年ほど同じものをお送りしました。その後、再び不眠が出てきたとご連絡を戴きましたが、詳しく聞いてみると、「メタボ気味なので、ご飯を制限している。甘いものを欲しくなるので、チョコレートを良く食べるようになった」とのことでした。飲食に乱れがあったことから、消化器に再び亢奮が起こって、不眠などの不快な症状を出したのであろうと考えました。飲食を元に戻すようにアドバイスをしたところ、直ぐにもとの良い状態に戻った。
考察
この方は精神的緊張の持続で、消化機能を中心にからだの機能に亢奮が起こったために、冷たい飲みものを異常に好むようになったことが水滞証を起こさ、そのことで自律神経を乱されたと思われる病態でした。