経験例10 胃の膨満感・首や頭の締め付け感・倦怠感の強い女性 【 自律神経失調症の治し方 】

発病の経過と症状

20代の頃から頭痛があった。倦怠感は数年前から。このところ、胃の膨満感が強い。原因に思い当たることはないとのこと。頭痛は生理に影響される。胃の膨満感は食後が特にひどい。妊娠中に美容院でシャンプー中に気が動転。それ以降、仰向けになる歯医者にも行けなくなった。狭いエレベーターにも乗れない。また、首や胸を締め付ける服は着れない。常に、吐き気がして食慾がない。

弁証

・八綱弁証:裏証で、虚実挟雑証で、熱証であった。全体としては陽証である。

・気血弁証:体がだるい・疲れやすい状態である。気虚が存在するのは間違いない。また、胃の膨満感とわずかな食事で胃が張ることから気滞があることがわかる。気滞は実の症候であるから、この方はまさに虚実挟雑証である。つめが薄くてもろい・肌はかさ付いていると言う症状はないことから血虚証はないと判断された。

・五臓弁証:胃に膨満感がある・胃にはわずかしか入らないなどから気滞が強いことからこの方の病位は肝と胃にあることがわかる。

・病理的産物弁証:両足にむくみが出ることから水滞証がある。また、上述のように気滞証が存在する。

・病邪弁証:気滞が著名なことからこの方の病邪は内傷七情(精神的ストレス)であることがわかる。

病名

この方の不快な症状に胃の膨満感という気滞の症候があることから、病名は肝胃不和証であると判断された。肝胃不和証には和解剤である疎肝解ウツ剤が基本となる。また、水滞証が存在することから、化痰利水剤が必要であると判断した。

経過

1ヶ月の服用で著名に改善した。「肩こり・便秘・だるさが随分と消え、胃の膨満感も楽になった。これまでのしんどさが嘘のようである」とのことであった。2ヶ月目には「時々頭痛が出たが体調は大変良い。食慾がありすぎて困るぐらい。」との連絡を戴いた。半年後には「頭痛がたまに出てくるぐらい」になった。その後も体調の維持のために漢方薬の服用を続けておられる。

考察

この方は精神的緊張を高めて生活をされてきたことが自律神経を強く亢奮させてしまったようである。このような病態を漢方では肝気欝結証と言っているが、この病態で胃の気滞が主に出ているものを「肝胃不和証」と言う。この方は典型的な肝胃不和証であった。