経験例09 めまいと不安感 男性 50代 【 自律神経失調症の治し方 】

発病の経過と症状

一年前にめまいが起こり、その後、立ちくらみが頻繁に起こるようになった。病院に受診をしたら「頭位性めまい症」と診断された。
そのほか、「胸の圧迫感・予期不安(何かスケジュールが決まっていると逃げ出したくなる)・突然の発汗・腹部の動悸・いらいら・ほてり」と言った症状がある。会社の支店の立ち上げでとても疲れていた。いつもではないが、16時以降から暗くなるまでが特に悪くなる。

弁証

・八綱弁証:裏証である。「疲れやすい・体がだるい」などの症状から虚症である。たヾ、水分の摂取量がとても多いことを考えると実症でもある。このことからこの方は虚実挟雑証であると判断した。全体としては陽証である。

・気血弁証:気虚である。気の症候である陰虚及び気滞はみられない。血の病証である血虚、陰虚、血オもまたみられない。

・五臓弁証:「舌が痛む・口内炎が出来やすい・歯茎が腫れて痛む」と言う症状が頻発することから胃熱証であると判断した。また、「予期不安」があることから「心」に病位があることがわかる。

・病理的産物弁証:気滞、水滞及び血滞を示す症状は見当たらない。

・病邪弁証:発症の背景とこの方の病位ー胃と心から病邪は内傷七情(精神的ストレス)と飲食不節であると判断をした。

病名

この方の病名は「心火旺証を併発した胃熱証」であると判断した。この方はアルコールの摂取がかなり多かったことからアルコールがまた胃熱証を増幅させたと判断して、アルコールを減らしていただいた。

経過

1ヶ月の服用でなんとなく良いとのことであった。3ヶ月経つ頃には腹部の動悸とめまい感は消失した。半年ほどで症状のほとんどはなくなったがアルコールを飲みすぎると腹部の動悸が出てくる。その後、不快な症状はまったくといってよいほど消失した。

考察

この方の病態は精神的緊張下であったこと、その状態でのアルコールの多飲と言う飲食の不節があったことから、胃に強い亢奮が起ったようである。胃熱証である。胃熱証では二次的に心病を引き起こすことが多い。心病では「心臓」と「大脳新皮質系」の二つの臓器を担っていることから、心臓の亢奮からきた症状である「胸の圧迫感」と大脳新皮質系の精神神経症状である「予期不安」を引き出したと思われる。胃の亢奮が心に影響を与えた典型的な病態であった。