経験例08 たくさんの症状を訴える男性 【 自律神経失調症の治し方 】

発病の経過と症状

訴えられた辛い症状は「疲れやすく体がだるい・憂うつ感や不安感が強い・対人恐怖症・ものごとに意欲が出ない・頭がボーっとする・記憶力が低下・肩こり・目が疲れやすい・頭痛が強い・朝が起きられない・いつも眠い・おならが多い・頻脈・情緒不安定・体のほてりと熱感」などであった。
「人間関係でのストレスが原因だと思っている」とのことである。

弁証

・八綱弁証:当然のことながら裏証である。「疲労倦怠感が強い」ことから気虚証であるが水分をかなり多く飲めていることから単なる虚証ではない。虚実挟雑証と判断した。寒熱では熱証。全体的には陽証である。

・気血弁証:気虚証である。陽虚も、気滞もない。血の病証である血虚・陰虚・血オはない。

・五臓弁証:「舌微黄膩・吐き気・食欲不振」から脾胃もしくは肝の位置に病があると思われたが「口の苦味・胸脇部に重苦しさや痛みがない」ことから病気は肝にはなく、脾胃にあると判断した。

・病理的産物弁証:「体が重い・頭が重い・頭がボーっとする・口や喉が渇く・尿回数が少ない」ことから「湿」の存在が疑われた。水滞証である。そのほかの病理的産物である気滞および血オからくる症状は目立つものがない。

・病邪弁証:「舌苔は微黄膩」から熱邪と湿邪に侵されたことがわかる。

病名

湿熱証であると判断した。

経過

1ヶ月の服用後の連絡は「頭痛のために朝・夕に鎮痛剤を服用している。胃が不快である」とあった。2ヶ月目には「口が渇くが冷たい飲み物を飲まなければ胃腸は良い。神経が過敏になっているがそのほかの症状は少し良い」との連絡であった。
その後、紆余曲折があったが10ヵ月後には「調子が良い・頭がすっきりとしている」とご連絡をいただいた。その後はすんなりと改善してこず、良かったり、悪かったりを繰り返した。冷たい飲み物の制限できないことが大きな原因であると判断された。この方は2年を越えた現在でも服用されておられる。

考察

この方の症状を原因別に分類してみると体の中で何が起こっているかがわかる。

「疲れやすく体がだるい・頭がボーっとする・記憶力が低下・肩こり・目が疲れやすい・頭痛が強い・朝が起きられない・いつも眠い・頻脈」は血流の乱れに関する症状である。

「憂うつ感が強い・ものごとに意欲が出ない・情緒不安定」は大脳辺縁系の精神神経症状である。

「不安感が強い・対人恐怖症」は大脳新皮質系の精神神経症状である。

「体のほてりと熱感」は体の機能に亢進が起こっていることを示している。機能亢進状態であることがわかる。

以上のように、この方は脳および体に強い亢奮が起こっていて、血液の流れが乱れていることがわかる。機能の興奮はストレス(刺激)に対する抵抗の結果であるからこの方には強いストレスがかかっていると思われる。たヾ、大脳新皮質系の脳の亢奮は精神的ストレスでは通常起こらないものである。このことからこの方は精神的ストレス以外のストレスがかかっていることがわかる。大脳新皮質系の脳を刺激するストレスは「体の機能の乱れからくるストレス」であるから、この方には体のどこかに機能の乱れがあると推測した。この方への質問から、この方の体の機能の乱れは消化機能であることと判断した。