経験例06 不安感の強い30代 男性 【 自律神経失調症の治し方 】

発病の経過と症状

「なんともいえない不安感、恐怖感、動悸、冷や汗、めまい、胸が一杯になる、心臓の音が気になる」と言う症状を訴えられていた。
症状を自覚し始めたのは3年前。その前から朝の目覚めが最悪だった。「朝はなかなか起きられない、いくら寝ても寝たりない」と言う状態であったが、3年前に突然、上記のような不快な症状が襲ってきた。

弁証

・八綱弁証:裏証で、虚証。そして、わずかに熱証。

・気血弁証:気虚証

・五臓弁証:脾病

・病理的産物弁証:痰飲証と痰飲証に伴う胃気逆の症候が見られた。

・病邪弁証:飲食不節

病名

この方は接客業で、強いストレスの環境にあったために、内傷七情が病邪のように思えたが、状態を詳しく聞くと「お腹がすかない、食事はおいしくない、食後だるい、空腹時には胃に不快感が出る、軟便など」の胃腸症状がたくさん出ていた。「食欲がない、食後だるい、軟便」からこの方の脾は虚である。「起床時には胃の不快感が強く、ほとんど食事は取れない、空腹時には胃に不快感が出る」ことから、胃には興奮が起こっていることがわかった。この方の場合は夜のお仕事のために、飲食がかなり乱れていた。飲食の不節による脾胃不和症と判断した。なお、併せて飲食のご養生をお願いした。

経過

服用1ヵ月後には不快な症状が少しずつ軽減してきているとお話された。また、体調が悪くなってもあまり長引かない,毎日、体調が悪くなることはなくなった。 服用2ヵ月後の経過は良かったり、悪かったりしている。このところの飲食のご養生が出きていないとのことであったので、再度、ご養生をお願いした。
その後の経過も良かったり、悪かったりしていたが、症状の強さは少しずつ軽くなり、また、出てくる頻度も少なくなったとのことだった。服用6ヵ月後にはご本人から「症状は明らかに軽減し、ずいぶんと楽になった。正直、ここまで回復するとは思っていなかったのでうれしい限りである。ただ、もう完治までにはもう少しの時間が必要だと思う」とお話をいただいた。 「症状は完全に消えたわけではないが、ほぼ自己治癒力なるものは復活したように思うので、とりあえず、この時点で廃薬したい」とのご連絡を戴きましたのが、漢方薬を服用をされてから1年後でした。

考察

この方の病態は冷たいものの飲みすぎや夜遅くの飲食が胃腸機能を乱してしまったのが原因だと判断した。脾胃不和証は胃腸機能の乱れからくる病態であるが、胃腸機能と脳は脳神経(脳から直接出てきている自律神経)で結ばれているために、胃腸機能を乱すと、自律神経の強い興奮や精神神経症状が引き出されてしまうと言う典型的な例であった。