こんにちは。
自律神経失調症・パニック障害専門の漢方薬局 せいゆう薬局です。
今回のひとりごとは
購入した漢方薬の内容を教えてもらえない!?
です。
自分が服用している漢方薬が何なのか?
どういう生薬が入っているのか?
中身が分からないという方が稀にですがいらっしゃいます。不安に思いますよね。
そこには大して複雑でもない、分かりやすい事情が隠されています。
どんな事情があるのか、少しお話していきます。
服用中の漢方薬が分からないとは?
ご自身が薬局・ドラッグストアに足を運び、パッケージを見て漢方薬を購入したり
病院で医師から処方された漢方薬などであれば、漢方薬の中身(生薬)は分かるようになっているはずです。
- 1日量あたり○g中
- ・■■■■ ○○mg
- ・■■■■ ○○mg
- ・■■■■ ○○mg
- ・■■■■ ○○mg
- ・■■■■ ○○mg
のような形でパッケージや添付文書に記載があるかと思います。普通はそうです。
では、服用している漢方薬の中身が分からないのは、、、
ほぼ全ての場合が漢方薬局から購入した漢方薬であるかと思います。

購入した漢方薬なのに、自分がどんな漢方薬を服用しているか分からない。聞いても教えてくれない。
そんな事例は多くはありませんが、稀にお聞きします。
前回のひとりごととは反する内容ですが
自分が何を服用しているのか分からないというのも不安だと思います。
自分に合っているのか確かめたい。
合わなかったとしたらどういう漢方薬が合わなかったのか知っておきたい。
そう思われるのは当然のことです。(ただ、ネットの情報を盲信し過ぎないようにはしておきましょう。)
このように漢方薬局が処方(漢方薬)の内容を明かさないことには理由があります。
漢方薬の内容を明かしたくない理由
どうして漢方薬局は処方内容を明かしたくないのか。
これは単純にお客様に逃げられたくないからです。

自分が飲んでいる漢方薬は○○円で購入していると分かると
この漢方薬、もっと安くで手に入らないだろうか?と考えてしまうのは人間の心理としては当然かと思います。
特にネットでは漢方薬を含む医薬品の販売が進んでいる現代です。
在庫を大量に抱えられる大型店やネット販売店では、大量に仕入れることで仕入れ値が安く抑えられています。価格競争をしたら町の漢方薬局など太刀打ち出来るはずがありません。
せっかくお客様として来店していただいても、1度目の購入後にはネット(もしくは他店)で購入されるようになるのは、やはり漢方薬局としては面白くありません。
他店での購入を回避するためには、漢方薬の内容を教えなければ良いというのが、処方内容を明かしたくない大きな理由だと思っています。(もちろん他にも細々した理由はあると思いますが。)
正直なところ、当店も町の小さな漢方薬局ですので気持ちはとても良く分かります。。
ちなみに後述もしますが、
当店では購入していただいた漢方薬は全て配合生薬・配合量まで分かるようにしてあります。
他のお店で漢方薬を購入したら悪いの!?
それでは、他の薬局・ドラッグストア・ネットで見つけた安い同じ漢方薬を購入することは悪いことなのか?
と言われると、消費者目線から言えば悪くないと考えています。
(当事者である薬局からすると悲しいですが。仕方ありません。それは安い方で買うでしょう。当たり前です。)
ただし、他店での購入時には気を付けておくことも存在します。

1.効果が同じとは限らない
まず、同じ漢方薬名(処方名)であっても、製薬メーカーによって製造方法が全く違います。
製薬メーカーも他メーカーよりも出来るだけ効果を引き出せるようにと惜しみない企業努力をされています。
同じ生薬を同じ分量だけ入れて製造していますが、製造方法によって効果に違いは出てきます。
(製造方法だけではなく、生薬の産地・年数などにも気を遣っています。)
雲泥の差が出るほど違うかと言われるとそこまではありませんが、ある程度の差はあります。
同じ漢方薬を購入したつもりが、効果は違っていたということはあり得るのです。
漢方治療に長く携わっていると効果の違いは実感として感じることもあります。
〇〇製薬のこの漢方薬はいまいち効きが悪いなど。。。
このあたりは営業妨害にもなりますので明言はしません。
ただし、もちろん同じメーカーの同じ商品であれば効果も全く同じです。
また、煎じ薬として薬局で独自に調合している漢方薬については、同じものはおそらく存在しません。
全く同じ漢方薬は、その薬局でしか買えないでしょう。いわゆるオーダーメイド漢方というものです。
煎じ薬は割高になりやすく、内容が分かると同じ処方の安いエキス剤(粉薬)に流れやすい部分はあります。
2.購入したお店に相談しましょう。
他のお店で購入したら、それ以降は、漢方薬についての質問・相談はそのお店で行ってください。
当店でも極稀に
「半年前にそちらで購入した漢方薬を(当店では一度しか購入していませんが)その後も続けて服用しているのですが、なかなか治りません。」
などとご連絡いただくことがあります。
当店では改善の進み具合などを見ながら、漢方薬の変更・調節を行っていきます。
治らない状態で半年も同じ漢方薬を続けさせるようなことはしません。
「その相談は、現在購入しているお店にお願いします。」
やんわりと購入している店舗にご相談下さいとお話しています。
漢方薬は購入しておしまいではなく、服用開始後のフォローの方が大事です。
漢方薬を服用さえしていれば、特に何もすることなく調子が良くなっていくということの方が少ないと考えています。
あなたのために漢方薬を選んでくれた訳でもなく、ただ安価に漢方薬が購入出来ただけの薬局・ドラッグストアがどれだけあなたの状態を把握して、服用開始後のフォローしてくれるのかは考えておきましょう。
以上のようなことを理解していただいた上であれば、他のお店で漢方薬を購入することは特に悪くもなんともないと思っています。
ご自身が体調を良く出来るように、出来る範囲での行動を取っていきましょう。
体調を良くしたいが、安くも済ませたいというのも選択肢として問題ないと考えています。
最近は漢方薬を自分で調べて買う方が多いですが、漢方薬は安全・安心な薬であると盲信しているとてもリスクのある行為です。
間違った漢方薬を服用して体調を崩すことは普通にあります。そして間違った漢方薬の情報をネット上ではたくさん見かけていることも事実です。
またこのあたりは別のひとりごととして呟いていきたいと思います。
漢方薬局側の対策
話を元に戻します。
一度購入していただいたお客様の他店での購入を阻止したいために行っている薬局側の対策が
漢方薬の内容を明かさない
というものす。

内容(配合生薬や分量)が分からなければ、自分の薬局でしか購入が出来ません。他店で何を購入したら良いかも分かりません。
企業努力?と言えばそうなのですが、苦肉の策であったり、消費者優先ではないとは言えるかと思います。
安い漢方薬を購入したいという考えがないお客様にとっては、自分の服用している漢方薬が何なのか分からない(秘匿されている)点で不安・心配が強いかと思います。
実際、何が入っているのか分からない漢方薬を私なら服用しようとは思えません。
ただし、不調で困って切羽詰まっている方にとっては藁にも縋る思いで購入した希望の漢方薬です。
言われるがままに購入して服用していくしかありません。
漢方薬局目線では気持ちは良く分かる反面、お客様の目線では不安だろうなと考えてしまうところです。
製薬メーカー側の対策
漢方薬製造メーカーもこうした事情を把握しており、町の小売店(薬局)に合わせる形で商品開発を行っています。
漢方薬の内容を「分かりにくくする」という方策です。
購入した漢方薬の配合生薬や配合量はしっかりと成分表示してあるのですが
いわゆる
・葛根湯
・小青竜湯
・大建中湯
などの処方名(昔ながらの漢方名)で販売をせず、メーカー独自の商品名を付けて販売するようにしています。
配合生薬をよく調べると処方名を割り出せるのですが、簡単には分からないようにしてあります。
製薬メーカーとしては他メーカーとの差別化を図りたい思惑もあるでしょうが、これが薬局にとっては他店に流れにくい一因に出来ているかと思います。
製薬メーカーによっては、ネット販売禁止品などを設定しているところもあります。

こうした取り組みは町の小売店(薬局)を大事にしていると受け取れます。
(ネット販売時には安く売り過ぎないように規制しているメーカーもあると聞きます。)
購入者としても、いきなりネット販売などで安く購入するよりも、始めにどのような漢方薬があって、自分にどのような漢方薬が合うのか、専門の薬剤師の意見を聞きたいという気持ちがあるかと思います。
そういった意味でも町の漢方薬局はあった方が良いと考えています。
安い方にばかり流れると小売店(漢方薬局)は衰退していきますし、おそらくそうなると漢方薬という治療・医療・文化自体が廃れていくと思っています。
時代の流れと言われればそれまでなのですが、小売店(薬局)を守ることも大事だと思っています。
当店での取り組み
さて、では当店ではどうしているのでしょうか。
当店では購入していただいた処方の内容は全て明かしています。
もちろん当店でも、処方の内容を秘密にしてしまえばお客さんは他の薬局から購入出来なくなるというメリットは得られるかもしれません。
ただ、当店では他の薬局では出来ないこと、適えられないことをお客様に提供することで当店からの購入を続けていただけるように努力しています。
例えばそれは、漢方薬をその方の体質・病態・治療の進行に合わせて適切に選ぶこと。
処方は治療経過に伴い適宜変更していきますが、1度しか購入しない場合はご自身で以降の漢方治療を判断することになります。
同じ処方を継続していくのか、変更した方が良いのか、変更するとしてどんな処方に変更するのか。
この判断は治療に携わっていないと不可能と思っています。
また、その方の不調を治していくために必要なアドバイスを治療中は適宜行っていくことも当店の大きな特徴です。
正直なところ、自律神経失調症やパニック障害において、処方を選ぶ(選薬)技術についても改善を進めていくためのアドバイスについても、当店よりも治療経験に基づいて綿密に行えるところはないと考えています。
それは、これまで35年以上、自律神経失調症(パニック障害)の治療を専門的に続けてきたためです。
治療してきた総人数が多いので、蓄積してきたデータ・経験・改善(失敗)例などは他の漢方薬局を圧倒していると思っています。
おかげさまでこれまでの治療が評価されており、お客様の囲い込みを必死に行わなくても大丈夫な状況にもあります。広告・宣伝を一切行わない経営が出来ています。
処方の内容を積極的に隠さなくても、治療経験という武器でお客様に選んでいただけるように出来ていると考えています。

当店では購入していただいた漢方薬の内容は詳細にお伝えしていますが
購入する前に
自分に合う漢方薬を教えて欲しい!
というご要望にはお答えしていません。
それは、当店が「その方に適した漢方薬を選ぶ」という仕事をしているためです。
仕事に対しては対価が発生することは当然のことと考えています。
「購入しないのだから金銭は発生しないだろう、だからおたくのこれまで積み重ねてきた治療のノウハウを無料で教えて欲しい」と言われているようなものです。
美容室に行って、「髪は切らなくても良い、こんな風な髪形にしたいから、詳しい切り方を教えろ。髪は切らないんだからお金は要らないだろう。」と要求をしているのと変わりません。
美容室では髪の切り方は教えてもらえないでしょうが、当店では購入後には処方内容を教えています。
良心的な対応が出来ている方だとは考えています。。
他の薬局では事前に教えてくれた!ということであれば、その薬局にお聞きになって下さい。
重要な点(法令)
とても大事なところなのですが
漢方薬を含む医薬品を販売する際、配合成分(配合生薬)の内容を隠すこと自体が違法とされています。表示しなければならないという法律があります。
成分を配合量順(一部例外はあり)に記載する決まりです。
- 1日量あたり6g中
- ・■■■■ 1500mg
- ・■■■■ 1500mg
- ・■■■■ 1000mg
- ・■■■■ 1000mg
- ・■■■■ 1000mg
(エキス剤として)
といった具合です。
通常は医薬品と一緒に袋や箱に入れる「添付文書」に記載をします。
大きなメーカーでは外箱にも記載をしているはずです。他にも効能・効果・注意すべき副作用などの記載もあります。
この大事な部分を購入したお客様に頑なに明かさない漢方薬局は複数店舗存在しているようです。(令和7年現在)
そうした薬局で購入していたので、これまで何の漢方薬を服用していたか分からないという相談を受けることもちらほらあります。
法令違反をしているはずなのですが、何か抜け道があるのか、違反と分かっていて無視しているのか、違反していることにすら気付いていないのかは存じ上げません。
当店は法令遵守で行きたいと思います。
おまけ
過去には、どうしても漢方薬の詳細を明かせと迫ったお客様に
ぐちゃぐちゃに書いた字として判別出来ないような紙を1枚渡していた薬局もありました。(実物の書面を見せてもらいました。)
おそらく内容としては配合生薬を嘘偽りなく記載しています。(配合量などはありませんでしたが。)
2つほどは判別出来る生薬がありましたが、それ以外は結局何が書いてあるのか分かりません。
達筆過ぎるでは言い表せないような書き殴った字での成分・生薬表示に笑ってしまった過去もありました。
そこには絶対に処方を明かしたくないという強い意志が現れていました。
最後に
さらっと書けるひとりごとのつもりでスタートしたのですが、結局長文となってしまいました。
今回伝えたいことは
・処方の内容を知らせないことは法令違反
・処方を秘密にしたい薬局の気持ちは理解出来る。
・当店では処方を知らせたとしてもお客様に選んでもらえるような専門的なサービスを提供している
といったところでしょうか。
長くなってしまったので、〆はさらっと終わります。
最後までお読みいただきありがとうございました。