経験例44 腹部膨満感、便秘と下痢の繰り返し、抑うつ感 50代 男性 【 自律神経失調症の治し方 】


発病の経過と症状

ご相談いただいた症状は下記のものです。

腹部膨満感
便秘と下痢の繰り返し
抑うつ感

・精神的緊張が続くと悪化
・緊張感の強い仕事をしている

8ヶ月程前から腹部膨満感を感じるように。

消化器内科を受診し、投薬を受けるも改善しなかった。

改善しないため、胃カメラと大腸内視鏡の検査。

大腸ポリープが見つかり除去、いずれも良性だった。
胃カメラでは逆流性食道炎が見つかる。
投薬治療も受けるが逆流性食道炎も腹部膨満感も改善しなかった。
(ポリープと腹部膨満感は関係がなかった。)

発症時、就寝前にラーメン、餃子、アイスなどを食べていた。
リラックスのためにコーヒーは欠かせない。


特徴

ご相談いただいた症状以外の特徴は

1.腹部膨満感、便秘、下痢、口が苦い、口内炎が出来やすい以外は、基本的に胃腸の調子は良い
  お腹が空いて、美味しく食事が出来ている。

2.寝付きが悪く、イライラ、怒りが強い、ヒステリックになるなど 脳の興奮状態は強い。

3.まっすぐに歩けない、手足の震え、ろれつが回らないなど 末端での血流の低下が顕著でした。

腹部膨満感があることから、胃腸に乱れがあることは間違いありません。
上記の状態を考慮して胃腸を整えていく治療を始めることにしました。

この方には、適切な飲食の摂り方を指導しました。

胃腸に乱れがある場合、飲食の適切な状態に整えなければ、改善がなかなか引き出せません。


治療経過

服用から半月後

飲食を言われた通りにしているためか、お腹の膨満感が明らかに改善してきている。

ただし、時々ぷーっと膨れてくるので油断は出来ない。

服用から1ヶ月

便の状態が良くなってきた。

以前は固い状態だったり、どろどろだったりをくり返していたが、最近はバナナ状になってきた。

服用から2ヶ月

腹部膨満感:ほとんど(95%くらい)なくなった。

便:軟便・下痢もなくなり良い状態。ただし、まだ時間が不規則。ガスが多い日、臭いが臭い日もある。

全体としては、かなり良い方向に向かっている。

服用から2ヶ月半

良い状態が続いていたが、同窓会で食べ過ぎてしまってから、以前ほどではないにせよ腹部膨満感が出てきている。

なんとなく便秘気味にもなっている。

服用から3ヶ月

胃腸は良い・悪いを繰り返すように。

お話を聞いていくと、好調・不調を繰り返す原因は飲食の摂り方だった。良くなると飲食が乱れ、悪くなると飲食に気を付けている。この点をアドバイス。

母の介護もあり、仕事も忙しい、外出する気もおきない。うつ傾向が強くなっている気がする。

服用から4ヶ月

胃腸は一進一退。アドバイス通りの飲食をすると良い状態になるが、油断して食べると一気に具合が悪くなる。

仕事と生活の環境がさらに悪くなっており、介護うつになっているのではないかと感じる。

やる気が起きず、家に閉じこもり、悲観的な気持ちになる状態が続いている。

ここで脳の疲労からくる抑うつ症状にも対応出来るように処方を変更した。もちろん、胃腸に対する治療は維持していく。

服用から6ヶ月

体調がかなり安定してきた。もう少し頑張りたい。

服用から7ヶ月

腹部膨満感・便秘・下痢・軟便・逆流性食道炎は全くなくなった。

昨月から働く環境が変わり、母の介護もより必要となってきた。抑うつ症状は強く、疲労感は強い。

服用から8ヶ月

抑うつ症状はまずまずの状態に。

食生活を変えたせいか、体重が治療開始前から8キロ減。会う人、会う人に「痩せたね」と言われる。

(治療開始前の体重は若干重め、8キロ痩せて適正体重になっている。健康的な痩せ方でした。)

中性脂肪の値は 330 mg/dlくらいだったが、今は100 mg/dlを切っている。(基準値 30~149 mg/dl)

体調が良好になったためか、ここで連絡が途絶える。

3ヶ月後

抑うつ症状は全くない。仕事は忙しく、疲労感はあり。

また腹部膨満感が出てきたので治療したい。お腹が膨らんでくると背中にコリが出てくる。

再服用1ヶ月後

非常に順調。驚くほどお腹の調子が良くなってきた。このまま油断せずに続けていきたい。

再服用2~4ヶ月

年末年始等を挟み、多忙と食べ過ぎで症状をぶり返しながらもある程度安定してきた。

ただ、また体調が安定してきたためか、連絡が途絶える。

6ヶ月後

最近、また不調が出てくるように。

腹部膨満感
ガスがたまる
排便時間が不規則に(以前は朝必ず出ていた)
お腹が張ると背中が痛い
朝、口の中が酸っぱい
倦怠感が強く、やる気が出ない
肩こり

治療を再開したいとのこと。

再々服用1ヶ月後

やっと膨満感が改善してきた。

指導を受けた食生活を心掛けているが、油断するとすぐに元に戻る。

再々服用2~4ヶ月後

順調に改善し、良好な状態に。

ただ、また調子が良くなったために連絡が途絶える。

5ヶ月後

年末年始を挟み、多忙と飲食の乱れでまた症状が出てきた。

食欲もあり、便通は安定しているがガスが出ず、腹部膨満感が強い。腹部膨満感さえ出なければ良好な状態。

また治療を再開したい。

再々々 服用1ヶ月後

やっと改善の兆候が出てきた。

再々々 服用2~4ヶ月後

膨満感はかなり軽減。調子が良くなってきた。

ただし、また調子が良くなったため連絡が途絶える。

7ヶ月後

再び、

膨満感
肩こり
背中の痛み
逆流性食道炎
倦怠感
憂うつ感
何もする気にならない

などの症状が出てきた。かなり辛い。

また治療を再開したい。

再々々々服用1ヶ月後

少しずつ快方に向かっている。

再々々々服用2ヶ月後

腹部膨満感はほぼ改善。体調は7割くらいの状態まできた。

ただ、逆流性食道炎だけが治っていない。のどのイガイガ感が強い。

再々々々服用3ヶ月後

まずまずの状態になった。

ここでまた連絡が途絶え、その後に連絡がくることはなくなりました。


考察

お仕事と親御さんの介護という強いストレスの中で生活をされている方でした。

継続してあるのは腹部膨満感。ストレスが強くなると抑うつ感が出てくるという状態。

この方は、最終的に「完治まで見届けられなかった」という心残りのある経験例です。

完治とは、症状が消え、体調も良く、再発することがなくなる状態を指します。体質が変わることで再発しにくい状態を目指しています。

完治に至るには、症状が消え体調が良くなってからもしばらく治療(服用)を続ける必要があります。

症状が消えただけでは、病気の根がまだ体内に残っており、さらに治療を続けることで病気の根を削っていかなければ、すぐに再発してしまう状態にあるのです。

この最後の治療過程を体質改善と考えています。

この方にも、再発する度に同じ説明をし

「調子が良くなってからもしばらくは服用を続けて下さい。」

とお願いしていましたが、調子が良くなると服用を止めてしまうことが続きました。

治療開始から、最後のご連絡までは4年ほどの期間があり。服用期間は延べ2年ほどでした。

恐らくは初回の治療で1年ほど続けていただけていれば、完治まで進み、その後再発を繰り返すようなことはなかったのではないかと思います。

完治後は、少し食生活に気を付ける必要はありますが、大きな制限が付く訳ではありません。

この方の場合、調子が良くなると食生活がすぐに元に戻ってしまい、再発を繰り返している状態だったのです。

自律神経失調症を漢方薬で治療する時の大きなポイントは、体調が良くなってからもしばらくは服用・治療を続けることです。

体質を改善し、体調をより安定させることで再発しにくい状態にしていきます。

この過程を省いてしまうと、高い確率で再発が起こります。

今回の症例は、苦い思い出でもあり、良い教訓となっています。

その後、再発なく健康に暮らされていることを願っております。


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